降り続いた雨で、1ヶ月以上も続いた暗い空模様から一転、10月は青空が広がる日が増えています。
早いもので今年も残り3ヶ月。
例年ならば、ぶどうの収穫もいよいよラストスパートという時期ですが、今年は玉割れの影響もあり、そうもいきません。
畑にはまだ、たくさんのぶどうが残っています。
そんなぶどうを畑で眺めながら、ふと気がついたことがあります。
最初にお断りしておきますが、これはあくまでも今年の我が家の畑を見て感じたことで、何か科学的な裏付けがあるわけではありません。
ただ、これだけ玉割れが出た年だからこそ、気になったことです。
それは、「肩で作った房は、玉割れが少ないんじゃないか?」ということです。
シャインマスカットは開花時期に「房作り」という作業を行います。
通常は花穂の下部6〜7cmほどを残して上部を切り落とし、残した部分を使って房を作ります。
この作業ができる期間は短く、その後のぶどうの生育にも大きく影響するため、限られた時間の中で一気に進めなければなりません。
もちろん人手があれば、それもクリアできますが、この時期はどこのぶどう農家も、まさに猫の手も借りたい時期で、簡単に人手を増やせるものでもありません。
そして、人手を増やせばコストも嵩みます。
そこで我が家が今年、一部の房で取り入れたのが、通常とは違って「肩」の部分を使って房を作る方法でした。
言葉だけでは分かりにくいので、通常の房作りとの違いを図にしてみました。

もともと肩で房を作った理由は、玉割れ対策ではありません。
作業を少しでも軽くするためです。
肩で作った房は、通常の房よりも最初から粒数が少ないため、その後に行う粒を間引く「摘粒」という作業の時間も短縮できます。
要は、省力化です。
ところが、9月に雨が降り続き、畑のあちらこちらで玉割れが出るようになってから、思わぬ違いに気がつきました。
肩で作った房を見ると、割れていないものが比較的多いのです。
もちろん、全部ではありません。
肩で作れば玉割れしない、という話でもありません。
通常の房と見比べてみると、肩で作った房はやや小ぶりで、粒と粒の間にも余裕があります。
今年、肩で作った房は600グラム前後のものが多く、通常の房とは少し違った形になりました。
この「粒と粒の間の余裕」が、雨で粒が膨らんだときの逃げ場になったのではないかと、畑を歩きながら考えています。
ただ、玉割れには雨だけでなく、水分の吸収、土の状態、樹勢、日当たり等々、いろいろな条件が関係しているはずです。
ですから、今年だけを見て「肩で房を作れば玉割れ対策になる」と結論づけることはできません。
でも、面白い。
作業を軽くするために取り入れた方法が、長雨という思いもしなかった条件の中で、別の可能性を見せてくれました。
今年は雨に泣かされたシーズンでした。
正直なところ、もう雨は勘弁してくれ、と思った日も何度あったことか。
それでも、玉割れが多発したからこそ見えてきたこともありました。
「肩で作る房」。
来年は少し意識して作ってみようと思います。
同じ畑、同じ木の隣接した場所で、通常の房と肩で作った房を作る。
房の重さ、粒数、形、そして玉割れの数。
今年は「なんとなくそう見える」だったものを、来年は写真と数字で残してみる。
もちろん気象条件にも大きく左右されるので「どうなるか」は、やってみなければ分かりません。
ぶどう作りは毎年同じような作業を繰り返しているようで、毎年何かが違います。
うまくいかなかった年には、うまくいかなかった年なりの発見があります。
今年の長雨が残していったものの中に、来年のぶどう作りにつながる小さなヒントがあるのかもしれません。
そして、これは房作りだけの話ではないような気もしています。
繁忙期にかかる人手やコストを意識しながら、できるところは手間を減らしていく。
その一方で、製品として出荷できるぶどうの割合、いわゆる「歩留まり」を少しでも上げていく。
そして何より、自分たちの年齢に見合った、無理なく続けられる経営規模にしていく。
もう一つ、考えなければならないのが品種構成です。
大ヒットした品種だけに、我が家でもシャインマスカットの栽培比率はかなり高くなっています。
もちろん、これからも大切な品種であることに変わりはありません。
ただ、一つの品種に大きく依存するということは、その品種が天候などの影響を受けたとき、ぶどう園全体がその影響を受けるということでもあります。
今年は、それを身をもって感じた年でもありました。
シャインマスカットを作らない、という話ではありません。
シャインマスカットに頼りすぎないで、いろいろな品種をバランスよく作り、収穫時期も分散させながら、自分たちの規模に合ったぶどう園にしていく。
そんな品種構成への転換も、これから考えていかなければならないと思っています。
もちろん、今年一つの結果だけですべてを決めるつもりはありません。
それでも今年経験した長雨と玉割れは、房の作り方だけではなく、作業の仕方、人手とコスト、歩留まり、経営規模、そして品種構成まで、これからのぶどう園を考えるきっかけになりました。
肩で作ったこの小さな房が、これからの天野ぶどう園を考える、最初のスイッチを押してくれたのかもしれません。
こんなことを思いながら、明日も畑に残るぶどうの収穫を進めます。

